公立大学法人 福島県立医科大学医学部 消化器内科学講座

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留学だより

昭和大学江東豊洲病院への留学

中村 純

留学先 昭和大学江東豊洲病院
期間 2015年4月から2016年3月

私は2015年4月より東京都江東区にある,昭和大学江東豊洲病院 消化器センターで「食道アカラシア・POEM」を研修する期間を与えて頂きました.一昨年の国立がん研究センターでの留学に引き続き,今回も充実した研修を行うことができましたので,ここに報告させて頂きます.

東京都江東区周辺

病院の所在地である江東区は東京23区の東部に位置し,隅田川,荒川,そして東京湾に囲まれた水と緑豊かな水彩都市と言われています.江戸の歴史・文化を残し下町情緒あふれる「深川エリア」・「城東エリア」,未来型の都市整備が進む「湾岸エリア」と地域ごとに特徴があります.

2020年東京開催のオリンピック・パラリンピックでは数多くの競技が行われますが,江東区はその中心地ともいえます.その他,東京都中央卸売市場築地市場が豊洲へ移転する予定となっています.現在も発展を続けている,大変活気のある街であります.

(参考・抜粋:江東区観光PRパンフレットより)

昭和大学江東豊洲病院

昭和大学医学部は,昭和3年に創設者,上條秀介先生によって昭和医学専門学校として創立されました.その関連病院の一つである昭和大学江東豊洲病院は,旧豊洲病院を主体として平成26年3月24日に新病院として開院した新しい病院です.病床数は300床ながら,診療科も大変充実しており,地域医療を支えている素晴らしい病院です.地域貢献の一環として土曜・日曜,祝日にかかわらず休診せずに診療を行っています(日本の大学病院としてはパイオニアではないでしょうか).

消化器センター

私が所属していた消化器センターについて紹介します.センター長は井上晴洋教授で,世界的に活躍されておられる先生です.内視鏡による診断学,治療を学んでおられる先生方で知らない方はおられないのではないでしょうか.消化器センターは,上部・下部・肝胆膵の3つのチームに分かれ,各々「内科医・外科医の合同の受け持ちチーム」となっている事が特徴です.世界を渡り歩いた井上教授曰く,世界初の試みとのこと.当初は驚きもありましたが,内科・外科が合同で診療することのメリットも多く,患者さんの治療方針について最善の方法を,最速で提供することができる,非常に画期的な体制です.

私は診断・治療のなかでも,後述します「食道アカラシア」「内視鏡的筋層切開術(POEM)」を学びに留学致しました.自分と同様に,他大学からも研修で同年代の先生が来られていましたし,アメリカ,カナダ,イタリアからの留学生もおりました.もちろん通常業務,当直もある訳ですが,その先生方と切磋琢磨しながら診断や治療について勉強することができ,一年間大変充実した研修となりました.

(消化器センターホームページ http://www10.showa-u.ac.jp/~ddc-kt/index.html

食道アカラシアと内視鏡的筋層切開術 (per-oral endoscopic myotomy;POEM)

食道アカラシアは比較的稀な良性疾患とされていますが,食事がつかえる,食べ物が寝ている間に口腔内に逆流するといった症状を呈し,QOLを著しく低下させます.発症早期の場合には内視鏡観察による診断が難しく,食道内圧測定が診断の決め手になる場合があります.

アカラシアの治療は従来,腹腔鏡やバルーンを使った治療が主体でしたが,井上教授が開発されたPOEMは従来法よりも患者の身体的,精神的な負担が小さく,かつ治療効果も高い治療法です.国内では既に1000例以上の方に施行され,優れた治療成績が報告されています.福島医大でも,2015年12月に井上教授をお招きしPOEMを施行して頂いております.自分も多数の症例を経験させて頂き,治療によって普通の食事が食べられるようになって帰られる患者さんを多く目にすることができました.
(POEMはその優れた治療効果から,平成28年4月に保険収載されました.現在,福島県立医科大学では保険診療で提供できるように準備を進めています.)

その他,国内,海外のライブデモに同行させて頂きました.送別会も開いて下さり,消化器センターの先生方に深く感謝しております.この場を御借りして御礼申し上げます.

おわりに

最後になりますが,私に再び国内留学という貴重な機会を与えて頂きました大平弘正教授を初めとしまして,医局・同門会の先生方,関係者の方々へ厚く御礼を申し上げます.ありがとうございました.

※POEMは2016年4月から保険適応となっております.アカラシアを含め,食道運動機能障害で日々の生活に困っておられる患者様がおられましたら,当科まで御連絡,御紹介頂けますと幸いです.

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