公立大学法人 福島県立医科大学医学部 消化器内科学講座

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国際学会報告

国際学会参加のすゝめ ~DDW2014に参加して~

高木 忠之

はじめに

昨年の引地先生から引き継ぎ,2014年度のDDW(Digestive Disease Week)の参加報告をさせて頂きます。私も周知の様に英語が苦手です。

懐かしいことですが,研修医1年目に同期10名ほど(当時は大人数でにぎやかでした)と受けた学位のための英語試験で1人落第しました。
翌年の試験日当日は,内視鏡を握っていたところを,S先生から鉛筆と消しゴムを持たされ,無理やり試験を受けさせられたことを思い出します。

そんな英語嫌いな私ですが,これまでも海外学会は時折参加しています。心境の変化には2つの理由がありました。

1つは,入澤先生に連れられ初めて参加した2002年のDDW(サンフランシスコ)で海外の学会の規模の大きさと先進性を目の当たりにして感動したこと,そしてオプションの楽しみ方(この時はサンディエゴに留学していた同期の片倉先生とも合流して)を教えて頂いたことです。

また,もう1つは普段はなかなか英語を話す環境にいないわけですが,必要に迫られると僅かですが上達する感覚になることです。これは,愛知県がんセンターに国内留学させて頂いている2年間,毎日外国人留学生と組みで内視鏡をさせて頂いていた環境で感じたことで,時折こういった環境に身を置かないといけないと感じています。

前置きが長くなりましたが,2014年のDDW参加報告を始めたいと思います。

DDW2014

DDW2014は,2014年5月3日から5月6日の4日間,アメリカ合衆国イリノイ州シカゴのマコーミックプレイスで開催されました。シカゴは,国土の広いアメリカの中でも,経度的に比較的中心であることから良く学会が開催されます。会場は北米最大のコンベンションです。自身は2011年以来の2回目となりました。今回は福島県立医大から,引地拓人先生,渡辺晃先生,紺野直紀先生と4人で参加致しました。

DDWは「アメリカ消化器病学会」「アメリカ消化器内視鏡学会」「アメリカ肝臓学会」「アメリカ消化器外科学会」の4学会からなる,2万人以上という多数の医師が集まる消化器関連としては世界最大規模の学会です。更なる詳細は,昨年引地先生が詳しく紹介して頂いたので割愛いたしますが,日本とは比較できない広大なコンベンションセンターの中で,様々な発表がなされておりました。

優秀演題に選出されれば口演にもなりますが,一般演題はすべてポスター発表であり,私たち4名はポスターでの発表でした。引地先生は「laparoscopy-endoscopy Cooperative Surgery for Gastric Submucosal Tumor and duodenal Epithelial Tumor」,渡辺先生「Efficacy of Endoscopic Ultrasound-Guided Fine Needle Aspiration for Rectal and Colonic subepithelial Lesions」が,紺野先生「Utility of a Body Immobilization Device(Ez-Fix) and a Radiaton-Shielding Curtain During ERCP」と「Usefulness of Contrast-Enhanced Endoscopic Ultrasound for Assessing Mural Nodules in Intraductal Papillary Mucinous Neoplasms 」が,高木は,「Clinical Features of Esophago-Gastric Varices and Efficacy of Endoscopic Injection Sclerosis in Non-Cirrhotic Portal Hypertension」を発表しました。

会場での質疑では,引地先生の発表は低侵襲で安全性を考慮した手技として,紺野先生の発表はERCPや治療内視鏡は全身麻酔が当たりまえの欧米人にとって東洋人の内視鏡の実状(抑え込まれてERCPしている状況)が奇異に映ったのか注目されておりました。

学会期間は,数々の部屋で各々講演やシンポジムなどが行われております。電話帳の様なAgenda Bookを抱えて,主に胆道・膵臓疾患関連の講演やポスターから,最近の流れを確認してきました。ERCP関連では,未だに膵炎予防の方法が討論され重要視されておりました。

膵管ステントやNSAIDsの使用(坐薬)が良く,坐薬に関しては今後当院でも検討したいと思っております。また急性膵炎後膵仮性嚢胞の治療では,EUSガイド下嚢胞ドレナージのみでなく,経皮的ドレナージ併用の有用性が報告されておりました(中には腹壁に消化管のメタリックステントを留置してnecrosectomyを行っておりましたが,侵襲性を考慮すると本邦で一般的になるかは疑問でした)。EUS-FNA関連手技も多くの発表がありました。

欧米で広まったEUSガイド下経胃的胆道ドレナージの発表は,近年は本邦からの発表が多数を占め,専用の胆管ステントの開発も行われているようです。門脈圧亢進症関連では,本邦でも静脈瘤治療にヒストアクリルが保険収載されました。以前から行われている欧米の方法も参考になりました。

またEUSガイド下に直接胃静脈瘤を穿刺しコイルで塞栓する方法をVTRでみることができました。導入には越えるべき問題もありますが,非常に勉強になりました。

最後に,一番トピックに感じた内容は、Probe-based confocal laser endomicroscopy(pCLE)の発表でした。ERCPカテ―テルや,EUS-FNAの穿刺針を介して,直接胆道腫瘍や膵嚢胞性腫瘍内に留置し,超拡大のmicroscopeで病理学的に診断していくというものです。非常に有用な報告でしたが,機械も高額であり,今後汎用されるより安価な機器開発を期待しています。

学会期間中は朝,夕の集合時間は決めましたが,ほぼ各自自由に興味ある発表を聞いていましたので,今後の臨床や研究に活かしていければと思います。

また,今回の学会の目玉は,アメリカ コロラド大学の深見悟生先生の口利きにより,本邦でも内視鏡学会理事長など数人しか訪れていないアメリカ消化器内視鏡学会の動物実験施設(institute for training and technology : ITT)の見学をできたことでした。

1時間ほど車で移動したシカゴの郊外にあり,まだ真新しい施設でした。同時に12匹くらいのブタを用いた内視鏡手技の実験や技術講習が行うことが可能で,各種麻酔機器や光源,動物用の内視鏡などが取り揃えておりしました。羨ましい限りの施設でした。特に,欧米では胃癌が少ないので,日本のESDの手技などを最近は動物を使って練習しているとのことでした。

学会期間中は,皆日本の学会より真剣に参加しておりましたが,息抜きも必要です。夕方や夜は外出しておりました。シカゴはアメリカで人口第3位の都会ということで,建築様式や施工年代の異なる高層ビルが立ち並び,ビルツアーが有名の様ですが五大湖からの風がいつも冷たいので参加しません。

今回は,引地先生恒例のメジャーリーグ観戦と,シカゴ美術館を見学しました。現地(シカゴ)で会津医療センターから来ていた同期の渋川先生と星先生と合流して楽しみました。メジャーリーグは2011年時福留選手が在籍し出場していたので応援できましたが,今回日本人はいませんでした(和田がベンチ入りしていませんでした)。

しかし,試合は白熱し1点を争う好ゲームでしたので楽しめました。また,引地先生が電車の切符を失くすといったアクシデントもあり,違う意味でもハラハラでした。シカゴ美術館は,ルノアール,モネ,ゴッホなど教科書でしか見られない絵画を沢山見ることができ,2013年に行ったロシアのエルミタージュ美術館もそうでしたが海外学会の楽しみでもあります。

この原稿を記載している2015年2月には,DDW2015(ワシントンDC)の採択通知も運よくいただき,引地拓人先生,中村純先生,紺野直紀先生,藁谷雄一先生,菊地眸先生の5名の先生方が発表予定です。毎年コンスタントに学会に参加する先生が増えてきていることをうれしく思います。

おわりに

長い文章にお付き合いをいただき,ありがとうございました。国際学会は,世界中の最先端の治療法や内視鏡機器を知ることができる場所でもあります。海外の学会に参加して,初めて発見できることも沢山あります。まずは一度参加してみてはいかがでしょうか。私が行けるのですから皆さまの英語力なら大丈夫です。

最後に,国際学会にいつも温かく送り出してくださっている大平弘正先生はじめ医局の皆さま,病棟や外来,そして内視鏡診療部のメディカルスタッフの方々に感謝いたします。

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